天文本店 静岡市七間町
2009年 02月 14日
幸い花粉症じゃないから、
シャツを腕まくりで窓も全開で運転してると、
街のいろんな匂いが車内に入ってくる。
冬の間、閉め切った窓に遮られて忘れていた五感のひとつ、
やっぱり、喰いモノのモチベーションを上げるには匂いだと、
きょう、あらためて実感の昼飯どきの合図がした。
七間町を伊勢丹方向に向かって行くと、
昭和町通りとの交差点でごま油の香ばしい匂い。
止まった信号で右横を向くと、こりゃあもう天ぷらちゃん。
信号が青に変わり、グルッと廻ってコインPを探し、
本能の赴くままに天文の暖簾をくぐってしまった。
天文はオレが子供の頃から、今と同じとこに店を開いている。
昔と比べて店は垢抜けてきれいになったが、
子供の頃は、おばあちゃんと映画を観た帰りに食べる鰻丼が楽しみだった。
天文なのに鰻丼だが、
今も看板には、天ぷらよりうなぎの文字の方が大きく書かれてるのは、
やっぱり天ぷらよりうなぎの方が得意なのか、
でも、カウンターの向こうには、銅製の大きな天ぷら鍋がドンとあるから、
きっとメインは天ぷらなんだろう。
さて、喰ったのはかき揚げ丼。
海老の天丼でも良かったのだが、
ごま油の香ばしい匂いを嗅いだ瞬間から、
どうしても天ぷら衣に包まれた烏賊と小柱の食感が欲しくなってしまっていたのだ。
目の前で職人さんが揚げてくれるかき揚げ、
揚げあがってから、しばらくジッとそのかき揚げを見つめて、
ここぞと決意するかのように、
さっと天つゆにくぐらせて丼のご飯の上に置く。
たかが天丼、されど天丼なんだろう。
さっくさくの衣に、
思った通りの烏賊と小柱、
それに小海老と椎茸がかき合わされて、
辛口の天つゆで締められている。
ごま油の香りの中で深呼吸して、
さあて、初夏のような暑さの街で、もうひと仕事。
だいたい、2月のこの時期は、
静岡でも風花が舞ったり、数年に一度は雪みたいのも降ったりするのが普通。
いくら温暖化と言っても、こりゃあやり過ぎだぞって思ってしまう。
そんな思いで店の表に出たらまたごま油の香ばしい匂いがして、
もう一杯喰いたくなってしまうのは、
そりゃ、喰い過ぎなんだろうけど、
エアコンの効いた部屋でのビールと天ぷらを思い浮かべたのは、
決して季節外れでもなんでもないきょうの街だった。
天文本店
静岡市葵区七間町14-3
TEL;054-252-0510
11:00~21:00
不定休
かき揚げ天丼、¥1,600也。