
元々は東海道のお茶屋さん。
だから今でも、メニューには蕎麦もうどんもあるし、
よもぎ団子や甘酒にお新香もある。
オレなんか、どちらかと言うと、
箱根峠のお蕎麦屋さんのイメージが強く、
「最近、鰻の幟が立っているけど、どないしたん」くらいに思っていた。
ところが、そんな鰻屋の地元での評判がすこぶる良い。
お茶屋で鰻を焼き始めてまだ何年も経っていないはずなのに、
曰く、「三島一誠実な鰻屋」、曰く、「街中の有名店に行く気がしなくなった」とか。
三島と言えば、桜家、うなよし、うな繁、本町うなよしなどと鰻の銘店が連なる街、
そこで評判になると言うんだから、これは一見の価値アリである。
HPには、予約は必須みたいに書かれていたが、
要はあまり客を待たせたくないって気持ちかららしく、
当日の営業が始まってから電話しても、充分に受けてもらえた。
果たして、店に着いてみると、
まずは、入り口の囲炉裏周りには、近所のおじいさん達が、
柿の種を肴に缶ビールをやっている。
そして、座敷の一番奥には、これも近所らしいおばあちゃん達が、
わいわいと楽しそうに鰻を待っている。
なんか、村の寄合いの風情だ。
それでも、おじいちゃん達も、飲んでる脇にしっかりと鰻の重箱があり、
おばあちゃん達の席にも鰻の後には、お団子が運ばれて行ったりして、
村の寄合いにしては、結構やるなあという感じである。
さて、オレ達の鰻、
電話では、2枚の竹を頼んでおいたが、
どうも値段とおじいちゃん達の中身を覗いて見ると、
3枚の松の方がCPは断然高そうだし、
店のオバちゃんも、3枚の方がお得だよと言うので、
ここは、3枚の松に変更も、快く受けてもらえた。
どこぞの鰻屋で予約を変えようものなら、
行列の一番後ろに並び直しとかになりそうなくらいの勢いで睨まれるが、
山中ののんびりした鰻屋では、間違ってもそんな接客はない。

待つこと20分くらい、
2本目のビールがまだ空け切らないうちに鰻が来た。
運んできたおねえさんが、「鰻ちょっと多めだけどあっさりしてますから」と言うが、
そこに鎮座する鰻、鰻自体はそんなに大きなサイズではないにしても、
しっかりと厚目で、お重の隅々までぎっしり敷かれている。
タレは甘さを抑えているが辛口というほどでもなく、
鰻も、おっしゃる通り、脂ぎった感じではなくあっさりと上品で丁寧に焼き上がっている。
そして、特筆すべきは脇役の山椒。
ビールの肴にと頼んだ肝煮に降りかけた時、
「んん、これはなんだ」と思ったが、
勘定の時に、オバちゃんに聞いてみると、
生の刻み山椒だと言う。
香りが対面からでもやって来るし、
鰻に降りかけた時の芳香が素晴らしい。
あまりたくさん掛け過ぎると、口の中に山椒の辛味が残るくらいの活きがある。

街中の有名店で観光客に混ざって、
まるで遊園地のジェットコースターに乗るように席をあてがわれ、
流れ作業のように運ばれてくる鰻を食べるなら、
ちょっと遠いけど、まあ峠道が混んでなきゃ30分、
のんびりとおじいちゃん達の話を聞きかじりながら、
丁寧に焼き色が付いた、誠実な鰻を食う方が、どんなに旨いか。
次回には、もう少し時間をかけて、
鰻の後には囲炉裏端に席を移してお団子まで頂いてこようかと、
そんな山中の鰻屋さん、
自分達の飲んで喰った後始末を、
店の奥に自分達で運んで行くおじいちゃん達が印象的だった。
鰻工房 竹屋三島市山中新田34
TEL;055-985-2307
11:00~18:00
水曜休
松(うなぎ3枚)にビール2本と肝煮で¥5,200也。

後日談がありまして。
実は、上の¥5,200也、松の鰻が¥2,900で、
それが2杯だけで¥5,800なのに、
全部で¥5,200ってありえないと、
連れから言われて、あ~そうだと。
その日の夕方、
未払いになっていたお代を支払いに伺ったら、
鰻の骨せんべいを頂いちゃいました。
ごちそう様でした。
美味しかったです。