
「蕎麦喰いとは修行なり。」
最近、なんかそんな蕎麦屋が多くて、
まず、そのまま香りを味わい、次につゆに付けて味わい、
最後に、そのつゆに薬味を入れて味わう・・・とか。
浅草の焼肉屋さんの御曹司も言ってるけど、
「蕎麦なんて、気軽にズズッズーッと喰えりゃあ、それでいいってもんじゃん。」
とは、ならないのが最近の流行の蕎麦屋らしい。
そして、三つ割り菊。
またしても山の中、そしてまたしても修行っぽい。
なんでまた、こんな山奥に店を出すのか聞いてみたい気もするが、
イノシシとか猿とかが出てきても不思議じゃない山道を延々と登っていく。
途中、韮山と言えば反射炉、
子供の頃、親に連れられて来た記憶があるが、
反射炉の記憶より、そこで営業していたバーベキュー屋さんの記憶しかないのは、
やっぱり子供の頃から食いしん坊だったのか、
さらには、もうすっかり営業をやめてしまった旅館とか、
そんな昭和の観光地の残骸のような韮山の、さらに山の中。
しかしながら、その着いた先の三つ割り菊の駐車場には、
横浜、多摩に尾張小牧や広島ナンバーまで。
いくら高速が安いって言ったって、
途中にこれといった観光地がない場所に、
これほどまでの県外ナンバーが集まる理由はなにか、
「きっと、旨いんだろうなあ」
連れに言われるまでもなく、オレもそう思ったが、
店内に入ると、その洗練された風情に、いよいよ修行の匂いを感じ、
さらに、そのメニューを見ると、
ざると田舎と焼き味噌しかなく、完全に修行だと気が付く。
でもまあ、お酒の類はあるらしく、
塩豆と焼き味噌を肴にビールは飲める。

頼んだのはざる3枚。
メニューには、田舎もあったが、看板が笊だし、「ここはざる」となったが、
後で、1枚は田舎にすれば良かったと、素朴に後悔もした。
さて、その味。
やっぱり、こんな山奥にまで他県ナンバーが来るはずだという味である。
分かり易さでは、裾野や御殿場の蕎麦屋もいいが、
ここのは、そういう蕎麦とは一線を引く。
二八の瑞々しさと、蕎麦の風味が抜群で、
つゆも上等だ。
玉子焼きや板わさどころか蕎麦掻もなく、
天ぷらや鴨もない。
そんな山奥の蕎麦屋だが、
店を出ると、なにかやり終えた清々しさを感じたのは、
やっぱり、三つ割り菊とは修行の場だったのか、
「よーし、あしたもお仕事がんばろー」などとは決して思わないのが常だが、
この時ばかりは、ちょっとそんな気になってる自分を感じていた。

だからって訳じゃないが、
帰り道を、登って来た道をさらに登って、別のルートで帰ろうなどと、
前向きに思い、車を走らせていくと、
韮山のその山奥に、
大根がやたらそこら中に干してある一帯に出た。
最初は、農家の軒先に干されている大根を見つけ、
「あ~季節だね」なんて話していたが、
その内、それが狭い道路の両脇に、
干し台?状の建造物?らしきものが延々と連なりだし、
それが、山道のカーブに沿って続く。
さらには、山の斜面に、まだ大根は干してなかったが、
きっと、あれもそうだろうという巨大な干し場まで出現し、
ただ、その一帯を過ぎると、
何事もなかったような、淡々とした田舎風景になる。
じゃあ、あの一帯はなんだったんだろうか。
山の斜面に作られたあの巨大な大根干し建造物に大根が干される光景は、
間違いなく、珍百景に登録されるだろうけど、
もう一度、あの場所に行け、と言われても、どうこをどう行ったのかよく覚えてなく、
なにか幻のような気もして、
これもまた、修行のうちなのかと、そんな訳ないが、
そう言えば、三つ割り菊には、辛味大根もなかったなどと思い出した。
笊蕎麦 三つ割り菊静岡県伊豆の国市中1614-4
TEL;055-944-1900
11:00~15:00
月・火曜休
ざる蕎麦3枚にビールと焼き味噌で¥3,000くらい。