bills 七里ガ浜

世界一旨い朝飯は、築地の寿司大の握りかと思っていたら、
一般的には、こっちらしい。

サーファーたちがプカプカ浮いている長ぁ～い七里ガ浜を眺めながら、
朝の陽射しの中、デッキで飲む熱いコーヒー、
湯気が立ち上がっているスクランブルエッグは、
フォークでさわるだけで崩れていくし、
隣のリコッタチーズがふんだんに使われたパンケーキからは、
メイプルシロップの芳香が潮風に乗って流れてくる。

なんて情景を妄想していたが、
現実とは、やはり、そんなに甘いもんじゃねえ。
3月とは言え、まだ中旬、
浜からの風は冷たく、とてもデッキで優雅に朝食なんて芸はできない。
唯一、オニーサンのふたり組が仲良く肩を並べて、ビールを飲んでいたくらいだ。

店内はオレたちも含めて、あきらかに全員観光客、
カップルにオネーサンの3人組み、そしてオバサンの集団。
どこの観光地にもあふれている組み合わせだ。

「そんなに卑屈にならずに楽しんだらいいじゃん」と隣から聞こえて来そうだが、
いや、充分に楽しませてもらった。
例のスクランブルエッグはとろとろで、
卵黄も卵白もきっちりそれぞれの味をキープしているし、
アディショナルのローストトマトは、焼かれて凝縮した旨みに、
なんとも懐かしい青臭さがほのかにして、
この季節にしては、奇跡のような夏の路地トマトのようだったし、
その例のリコッタパンケーキなんて思わず、
「こんな旨いパンケーキ初めてッ！」と女子高生のような声を上げてしまったくらいだ。
ただ、やっぱりこういう朝飯、いやブレックファーストと言うのは、
その近所に住み、休日の朝、浜辺を散歩した帰り道にちょこっと寄り、
コーヒーにパンケーキで、特にあとの時間を気にすることもなく寛ぐもので、
間違っても、車で箱根の山道を超え、
渋滞の134号を、時間を気にしながら急ぐ果てにあるものではない。

ただひとつオレたちにできるのは、
とりあえず着いたら、七里ガ浜の駐車場で仮眠を取り、
目が覚めたら、浜をゆっくり散歩してから店に行くことしかないような。
もちろん、朝飯のあとには、江ノ島水族館に行こうだとか、
鎌倉を食べ歩こうだとか、そんな余計な予定は入れずに、
のんびりと帰るだけの時間を取っておくことだと。

それにしても、例のパンケーキはホント絶品だった。


bills
鎌倉市七里ガ浜1-1-1WEEKEND HOUSE ALLEY 2F
TEL；0467-33-1778
8：00～22：00
無休
朝飯に￥5,000の散財です。